■携帯電話コンテンツビジネスの現在
携帯電話、あるいはケータイのコンテンツビジネスについて相談を受けることが、最近になってまた増えてきました。いつもお話しするのは、2007年現在、わずか1〜2年前に比べてずいぶんとプレイヤーの顔ぶれが変わったということです。
ほんの数年前までは、コンテンツプロバイダ(CP)⇒キャリア⇒ユーザーという、公式サイトビジネスが本流であり、メインのプレイヤーはあくまで公式サイトを運営する公認のCPだったのですが、今では公式の認可を受けていていない、いわゆる一般サイトが主流になりつつあります。
一般サイトというのは何も特別なものではなく、インターネット上に設置された普通の携帯電話用ウェブサイトです。これは、以前は『勝手サイト』と呼ばれていたことからもわかるように、携帯電話用のサイトは、キャリアの公認を受けた『公式サイト』が主流で、『一般サイト』は「誰が見るともわからない勝手にやっているサイト」という認識がありました。
それが現在では、一般サイトの中でも会員数700万人とも言われる『モバゲータウン』などのモンスターサイトが現れるようになり、もうひとつの主役になりつつあります。
■公式サイトとは
キャリア公認の公式サイトには、2つの大きな特徴があります。
ひとつは、auであればEZweb、ドコモであればiモードのメニューカテゴリーに掲載されるということ。これは(少なくとも数年前までは)勝手サイトとは比べ物にならないぐらいのトラフィックを発生させ、アクセスを約束されるようなものでした。
もうひとつは、携帯電話会社の通話料と合わせて、ユーザーに課金することが出来る、というものです。手数料は掛かりますが、ユーザーにとっても、CPにとってもこれほど手軽な少額課金手段は他にはありません。
それに変わるものとして例えばクレジットカード決済などが考えられますが、クレジットカードはその課金方法を提供するシステムの準備も簡単ではなく、また代行決済会社を使うと費用が馬鹿になりません。何より日本人の感覚では、クレジットカードを使用することにも抵抗感を持つ人がまだまだ多く、ましてやそれをサイトに打ち込ませるハードルは決して低くありません。
そのため、唯一とも言える安定した、安全な少額課金の方法として、この通話料と一緒に回収される情報料という課金は、『ちゃりんちゃりんビジネス』という用語を大手広告代理店に言わせるほど、ひとつのビジネス形態として認知されてきました。
■新たなプレイヤーの出現
人の集まるところに広告アリ、で、当然広告ビジネスも携帯電話サイトにも参入してきました。主に3つの形態に分けられます。
ひとつは、純広といわれる、通常の広告。掲載期間や表示回数を設定し、その露出の対価として広告料を支払うものです。
もうひとつは、クリック保証型広告。この場合のクリックとは、広告出稿者のページに遷移してくるリンクをクリックする、という意味で、つまりユーザーの誘導1回当たりいくら、という広告手法です。
そして、アフィリエイト広告。携帯電話やインターネット業界以外の方にはあまりなじみの無い言葉だと思います。成果報酬型広告といって、広告主の求めるアクションをユーザーが起こして、初めて広告料が発生するものです。
例えば、公式サイトの月額課金にユーザーが申し込むと、315円の広告料を広告代理店に支払うとか、消費者金融の口座開設の申し込みをすると、1万円の広告料が発生する、などのものです。
広告の仕組みは後ほど詳しく書きますが、それらの広告ビジネスを行なう広告代理店が参入し、大きな成長を遂げています。
そして、広告があるということは、それを掲載する媒体がある、ということです。
媒体とは、人々がほしがりそうな情報を沢山掲載し、そのウェブサイトにユーザーを集め、集まったユーザーに広告を見る、あるいはクリックしてもらい、広告料収入で運営するサイトです。
この3者、公式コンテンツプロバイダ、広告代理店、媒体が、互いの関わり方を変えながら今に至っていますが、現在伸びているのは、間違いなくコンテンツプロバイダ以外の2者です。なぜそのようになったのかは、次に挙げる2点が大きな理由です。
■公式サイトの優位性の埋没
公式サイトの大きなアドバンテージのひとつに、『キャリアのメニューから遷移できる』という点があると前に書きました。携帯電話の画面はPCに比べはるかに小さく、表示できる情報料が限られます。また、その通信速度も遅く、必要な情報にたどり着くのに手間取ると、通信の待ち時間だけでもうんざりするほどです。
そこで、各キャリアは、メニューを設置し、ユーザーにわかりやすいようにカテゴリー分けをし、ある程度編集された世界をインターネットの中に作り出しました。それが『公式メニュー』であり、『公式サイト群』でした。数年前までは、これが携帯電話から接続するインターネットの、ほぼ全てだったのです。
しかし、数年前と比べて2つの大きな変化がありました。
一つ目は、検索エンジンの充実で、もうひとつは通信速度の向上です。
auのEZwebメニューにはgoogleが採用されるなど、ユーザーにとって検索エンジンの利用が手軽になり、相対的に公式メニューを利用する割合が減りました。
また、通信速度の遅さから、無駄なページをあまり表示させたくなかったのですが、速度が向上することにより、多少不要なサイトに寄り道をさせられたとしても、大きなストレスを感じることなくネットサーフィンし、必要な情報にたどり着けるようになったのです。
それらのことから、PC同様のSEO、SEMが重要視され、公式メニューからの遷移が最優先の状況ではなくなりました。
■公式サイト運営のデメリット
公式サイトの優位性の埋没のほかに、公式サイトには潜在的なデメリットが存在します。
ひとつは、まずそのステージに上がるハードルです。特にNTTドコモの審査は狭き門であることは有名です。
運営開始後のデメリットもあります。
まず、基本的に外部サイトへの遷移を作ることが出来ないというルールです。審査を通した公式サイトは、あくまで審査に通った範囲内で運営しなければならないため、その外部のサイトに接続することは出来ません。これが、サイトの柔軟性やリーチを狭めています。
また、こちらの理由が特に大きいのですが、公式サイトでは、わいせつ、誹謗中傷、不法行為などの可能性を一切排除するため、ユーザー同士のコミュニケーションをほとんど提供できません。掲示板を設置するにしても、全てCPが目視した後にサイトに掲載しなければならず、そのためリアルタイムのコミュニケーションは不可能で、また、ちょっと毒のきいたやり取りなどは、念のために掲載不可、という判断をせざるを得ないのです。
こういう理由から、いわゆる『web2.0』のような現在の流れに乗りづらいのです。